豊田氏のキャンプ論

〜前略
 日本は2月1日の一斉スタートで、しかも1カ月続く。この行事に各球団とも数億円をかけているが、技術の出来上がった選手たちにこれほどの調整期間はいらない。
〜中略〜
 もう一つ、日本のキャンプのうさんくさいところはこれが球団への忠誠心の確認の場になっていることだ。
 門限を守れるかどうか、集団生活になじむかどうか。要するに2月はシーズンを前に選手の扱いやすさを確かめる期間になっている。
〜中略〜
 巨人のV9時代は川上監督の管理が効いていたが、ONをはじめとする選手自身の抑制が実はすごかった。当時、宮崎市内のすし屋やステーキ屋で巨人の選手によく会った。
 彼らのご帰還は早く、新聞の原稿を書いて私が繰り出す午後9時ぐらいにちょうど入れ違いになった。外で食事をした翌日の巨人の面々がすがすがしく、若返っているのにはいつも驚かされた。
 外で食べるということは自分に必要な栄養を自腹でとるということで、宿舎、つまり球団のお仕着せの食事に「タダでありがたい」と満足しているようではいけない。一流選手は自分の体を愛する究極のナルシシスト(原文ママ)で、その体を守り、鍛えるのに人の手は借りない。
後略〜
(参照元:日本経済新聞 2005年2月10日 p.41 『チェンジアップ "自費キャンプ"の精神』豊田泰光)

 まともなマイナーリーグを持たない日本球界では育成と調整を同じステージでこなす必要がある以上、ある程度の拘束は仕方ないだろうが、落合監督の言う「放牧組」でさえ昨年の白紙メニューに違和感を表明し、渡辺選手のように今年は敢えて北谷組への参加を希望する選手もいるのは習慣として自律的なトレーニングに馴染んでいない弊害の現われだろう。
 落合監督のような指導者が増え、プロらしく自己管理の出来る選手が増えてこないとアマを含めた日本球界の体質は変らず、野球衰退に歯止めはかからないのかもしれない。
 それにしても豊田氏のようなまともな人が冷や飯を食い、日曜の朝からまともに勉強していない競技にまで"喝つッ"とか言っているお爺さん達の方がもてはやされる日本スポーツジャーナリズム界の未来の方が暗いかも。