1705-01-01から1年間の記事一覧

〜前略 国家や資本主義がそれぞれの社会に根付いている以上、それらの多様性をある程度受け入れる態度が求められる。国家や資本主義がどこにおいても文字通り同じ構造と同じ行動原理を持つべきだという議論は現実に対する根拠のない要求、一種のイデオロギー…

〜前略 商法のもつ規範と効率的な企業経営の要請との微妙な調和を図ることが、日本の資本主義の一つの特徴ともなっていた。 近時はコンプライアンス(法令順守)意識の高まりとともに、法と実務との乖離(かいり)は狭まったが、そうなると今後は、法が企業統治(…

〜前略 所得格差を示す指標がジニ係数。係数ゼロは完全な平等で、一が全くの不平等。日本の係数は上昇傾向にあり、海外と比較可能な数値でみると0.322とドイツ(0.252)やフランス(0.288)をすでに抜き、米国(0.368)や英国(0.345)に近い。 〜中略〜 エコノミス…

〜前略 商家や農家を含め当時*1の多くの人々の理想は家産を守って増やすという義務を果たした後、その多くを次世代に引き継ぐ一方、一部を隠居料として受け取り、隠居することだった。隠居とはいえ、やめるのは家産を増やす活動で、社会活動ではなかった。や…

指紋センサーを使った指紋認証でさえも、付着した指紋を採取すればゼラチンで作った「グミ指」を使って指紋を再現することができるという。

資本はそれ自体としては人間の意志を体現しない。資本主義を個別利害だけではなく、人間社会のニーズに合わせて発展させるには、富の社会的移転を正当化する工夫が要る。この移転を担ってきた制度的な核、それが近代国家である。資本主義の将来は、国家の機…

米欧の3つの大学が、重力や感性の力を上手く利用しながら平地でも滑らかに歩く省エネタイプの二足歩行ロボットをそれぞれ開発した。二足歩行ロボットではホンダ製の「ASIMO」が有名だが、これらの省エネ歩行ロボットはASIMOの10分の1以下のエネルギーで歩き…

〜前略 人事改革というと、すぐに「成果主義」の是非などの議論に陥りやすい。しかし、事業単位の人事的な独立性をまず強化し、各事業単位でどのような専門的人材を確保するかという一貫した仕組みを組み立てることが前提とならなければ、成果主義をいくら論…

古典派経済学の世界で資源制約といえば、自国の土地の制約のことであった。主な話題は人口と土地の比率、またはマルサスの言う人口と食糧の関係だった。しかし、19世紀ごろから蒸気機関の普及にともなう大量の石炭の利用と、交通・通信革命にともなう北米の…

〜前略 子どもは、たいてい好きな色を持っている。その好きであることに理由はなく、しかし生活のあらゆる局面で、その色が優先される。ピンクが好きな子どもは、傘も靴も筆箱も、みんなピンクだ。それが大人になるに従い、色遣いは時と場合を選ぶようになる…

〜前略 本そのもの(有形財)の取引と、本に収録されている情報(無形財)の取引を比較してみよう。本の場合、私が読んでいれば他の人が同じ本を読むことはできない(競合性)し、買い主に支配権を与え、他の人を排除することが、技術的にも経済的にも可能である(…

〜前略 現場の試行錯誤から、技術の適用範囲が広がり、しだいに国際的な汎用性が鍛えられていった。そこではイノベーション(革新)とイミテーション(模倣)が相互関連をもって進行した。例えば明治の日本では、少数のお雇い外国人の助けを借りて西洋から導入し…

〜前略 技術の発達と習得には、幾つかの段階がある。16-17世紀西欧で起きた科学革命はルネサンスや宗教改革に見られる近代的な価値観の一翼を担うものだった。18世紀イングランドでは、宗教的教義から自由でニュートン力学が自然に議論されるような、科学的…

20世紀の経験から考えると、19世紀末までの西洋型経路は、経済発展への一つのルートを切り開いたにすぎないように思われる。経済発展へのもう一つのルートは前回描いた東アジア型、すなわち農村に安定的な人口扶養力を形成し、そこから良質の労働力を引き出…

平成9年の医療費自己負担の引き上げは、国民負担を増加させたのか。事後的に見ると、平成9年度の国民医療費は、それまでと比べて著しく低い伸びとなった。毎年5%を超える伸び率で増加していきた医療費総額が、平成9年度には1.9%(29兆円強)と大きく減少し、1…

科学技術の発展というのは、科学者・技術者たちのコミュニティによって成り立つ極めて人間くさいものである。革命的な理論や発明というものは、その当時のコミュニティで広く共有されていた膨大な量の知見と蓄積を組み合わせ、最後にほんの一滴のしずくを垂…

近年、「東アジアの奇跡」を踏まえ西洋型発展経路とは別の経済発展経路もあったのではないかという歴史の見直しが進んでいる。 それによれば、東アジアの先進地域(日本や中国の中核地域)では稲作中心の小農家族経済が基本だったので、生産要素市場(資本、労…

〜前略 欧州には中世から公債市場、資本市場が存在した。制度の相互学習が進んだこともあって、利子率は数世紀にわたって傾向的低下を見せている。17-18世紀のたび重なる戦争による財政負担の増加は、公債市場の拡大をもたらした。なかでも英国は戦争に勝ち…

〜前略 所有から利用への発想の転換を現実化しうるシステムが、日本では幸いないことに、筑波大学の森亮一名誉教授の「超流通」というシステムとして提案され、関連特許も成立している。 これは、デジタル情報を利用するたびに使用記録が管理され、それを回…

要素技術はあくまでツールである。重要なのは、顧客の思い通りのシステムを作ることだ。ツールはそのために使えばいい。鋸(のこぎり)や槌(つち)の性能を詳しく解説しても、どんな家が建つのかさっぱりわからない。しかし、どういうわけだか、次から次へ…

目的を自ら設定し、環境との相互作用のなかで矛盾を超えて新しい知を主体的に生み出す知識創造企業を動かしていくのは、リーダーシップである。ビジョンを基に具体的な言語あるいは行動指針を示す。組織の壁を超えて「場」を設定する。それを対話と実践に結…

企業ではビジョンに基づいて対話と実践が連動することによって知識が生み出されるのであるが、そのプロセスには実存する(生身の)人間の関与が不可欠であり、そのための「場」が知識創造の基盤として必要となる。 日本語の「場」という言葉は、物理的な場所だ…

〜前略 また、企業の境界の問題も見直すべきである。既存の理論は、企業の境界を常に所有権の問題として扱ってきた。しかし知識を生み出す相互作用は、誰も所有できない。知識創造主体としての企業の境界は、資産の法的所有権ではなく、企業が促せる相互作用…

破たん、あるいは破たんが予想される企業に入り、財務から事業まで、企業活動に伴うすべてのリストラを担当する再生請負人。米国の業界団体、ターンアラウンド・マネジメント・アソシエイション(TMA)には約200人が登録、日本でも事業再生実務家協会など複数…

〜前略 ただ過去の積み重ねに基づいて現在に対応するというだけでは、環境変化への適応にとどまらず環境の変化それ自体もつくり出していく知識創造は不可能である。「どうありたいか」という独自の未来のビジョンを持ち、その未来から現在を引き寄せることに…

国際的な環境保護団体のコンサベーション・インターナショナル(CI)は2日、固有の生物種が豊富な半面、環境破壊などでその多くが失われている地域として日本列島を選んだと発表した。環境保全を訴えるために取り組んでいる調査研究事業で、世界全体では34カ所…

〜前略 知識創造企業においてはその企業固有の実践と対話の「型」が重要となる。型とは、当該領域での達人たちや優れた組織が理想とする行動プログラムの本質を凝縮したものである。つまり型とは、状況の文脈を読み、統合し、判断し、行動につなげるために、…

〜前略 大統領から閣僚や裁判官に指名された候補者に対する上院の公聴会は、日本では想像できないほど真剣で熾烈だ。その人物が十分な人格、識見を備えた適任者かどうかを徹底的に吟味する。挑発的な質問に、冷静に対応できるかどうかも重要なポイントだ。大…

知識はその性質上、「暗黙知」と「形式知」という二つのタイプに分けられる。組織的知識創造とは、この両者のダイナミックな統合プロセス、すなわち弁証法的な「らせん運動」である。 形式知は言葉や文章で表現できる客観的で理性的な知であるのに対し、暗黙…

酒席での陽気な大騒ぎのことを「コンヴィヴィアリティ*1(Conviviality)という。この言葉にかつて、社会批評家イヴァン・イリイチが新しい命を吹き込んだ。彼は世の中には人間を操作する社会制度とコンヴィヴィアルな社会制度があるとした。操作型の制度とは…