多くの都市において、市街地の中心部は、もともと単なる商店街、商業地であっただけではなく、たくさんの人が集まって住み、そこでの様々な交流を通して人と人が触れ合い、多様な文化活動を創出し、人や土地との関係を通して自治という活動を展開してきた「街」であった。それが、今、中心商業地の衰退とともに消滅しつつあるのが、日本の地方都市の現状である。この「街」の再生なくして、地方都市の活性化は有り得ないといっても過言ではない。
 また、「街」は、市民にとって様々な利害の対象であり、興味の対象となり得るものである。おそらく誰もが、「街」に対する想いがあるであろうし、現在の具体的な生活を通して「街」について語ることができるものである。「街」についての議論を通して、「街」という領域の中で、ある種の新しい人間関係の構築や将来の展望を描きながら、総意の醸成を図っていくことによって、市民にとってリアリティの感じられる将来像が描かれるのであろうし、また、自治体にとっては、個性あるまちづくりの展開にもつながるものと思われる。*1

*1:学芸出版「街は要る! [中心市街地活性化とは何か]」蓑原敬 河合良樹 今枝忠彦 p148 より