一般的な行政計画書に見られるような、耳ざわりのよいキャッチフレーズの羅列では中心部の再生や活性化の原動力になり得ない。
 ここで最も重要な事柄は、多くの市民の意向を反映した将来像を構築することであり、そのためには、市民へのヒヤリングによる意向把握が不可欠となる。ヒアリングを欠いたら、市民がリアリティを感じられるような将来像を描写することは不可能である。しかし、市民が語る言葉で将来像を描くことは極めて難しいことも事実である。要するに、将来像の構築には極めて抽象的な思考が要求されるのに対して、市民の発想は、現実の生活レベルを基本としており、また直接の利害関係が発生しない場合には、将来像の設定にあまり関心が向かわないのである。
 加えて現時点では、市民と行政が、都市計画やまちづくりについて議論できる共通の基盤としての言葉や概念が著しく欠如している。
 市街地および市街地中心地の将来像を描いていくためには、市民の身近な生活に具体的に関わりながら、かつ市民の幅広い興味を刺激していくことが必要であり、市民と行政が市街地および市街地中心部の将来について語れる共通の意識、言葉、概念を発見することが必要不可欠である。*1

*1:学芸出版「街は要る! [中心市街地活性化とは何か]」蓑原敬 河合良樹 今枝忠彦 p147 より一部を抜粋し編集