従来の経済政策の目標は経済規模の拡大に集中されてきた。パイの拡大はすべての人を豊かにし、すべての問題を解決する---これが、戦後日本の図式であり、現在も政府は「成長」を最重視している。
 しかし、今後、成長はできない。また、そもそも成長では物事を解決できなくなる可能性が高い。
○問題点 

  • 業務形態が多様化し、仮に(一時的な経済成長によって)パイが大きくなってもすべての人に所得の上昇をもたらすとは限らない。
  • リタイアした高齢者が増加し、平均寿命が向上することによって人生における余暇時間が増加し、経済の拡大が必ずしも関係を持たない人々や時間が増大する。

○対処法

  • 付加価値率の向上、労働分配率の引き上げにより労働時間当たりの賃金水準の向上を図る。
  • 輸入市場の自由化などで、国内物価水準を引き下げ(適正化)を図る。*1

*1:週刊エコノミスト 2005.1.4 p26 コラム『難しくなる経済政策 「成長一辺倒」から分配・物価水準の適正化へ 松谷明彦(政策研究大学院大学教授)』より抜粋、編集