日本の政府支出が少ないのは、わが国が全体として同質的な国であるからである。文化的背景や言語の面でも、ほとんどの国民が共通の環境にあり、国内の摩擦を公的に調整するコストをあまりかけなくてすんでいる。また、社会の安全面でも、治安の良さや慣習の規律が上手く機能している。警察や司法の監視・介入をそれほど必要としなくても、われわれの経済活動や社会活動が維持できている。
 〜中略〜
 また、わが国ではこれまで家族制度や地域の共同体が(あるいは企業も含めて)社会保障を肩代わりしていた。公的部門よりも民間部門で、リスク分散する機能がしっかりしていた。この点も、他の先進諸国に見られない特徴である。
 しかしこのような日本の優位性を今後も維持するのは、難しいかもしれない。
 後略〜
(参照元:「財政赤字の正しい考え方 政府の借金はなぜ問題なのか」井堀利宏 東洋経済新報社 p.87-88)