平成9年の医療費自己負担の引き上げは、国民負担を増加させたのか。事後的に見ると、平成9年度の国民医療費は、それまでと比べて著しく低い伸びとなった。毎年5%を超える伸び率で増加していきた医療費総額が、平成9年度には1.9%(29兆円強)と大きく減少し、1兆円程度の国民医療費が節約されたといえる。これは、自己負担増の結果、無駄な医療費が節約されたといえる。これは、自己負担増の結果、無駄な医療費が節約され、国民全体の負担は軽減されたことを物語っている。
 年金の負担について考えると、政府は資金仲介のみで増加分は全て国民に配分される。負担の増加だけを捉えて、国民負担が増加すると言い切ってよいのか。今回の所得税引き上げの増収分は、基礎年金の国庫負担に充てられている。税を増やすかわりに社会保険料の軽減が図られているわけで、国民負担は変わらないといってもよい。
(参照元:日本経済新聞 2005年2月11日 p.17『大機小機 国民負担とは何か』ミスト)