一見して良いことでも慎重にすべきことは多い

 論文では2つの技術が説明されている。遺伝子を植物に導入する『トランスバクター』(TransBacter)、そして遺伝子の場所とその働きを視覚化する『GUSプラス』(GUSPlus)という技術だ。この研究――ロックフェラー財団から資金助成を受けた――に参加したのは、リナックス開発にかかわる活動をモデルとし、この研究を1つの「カーネル」として提供したいと考える科学者たちだ。ここで提示されているのは、オープンソース化された生物学における恐らく初めての実用的な技術といえるだろう。
 このカーネルをベースとした技術の開発を希望する研究者たちは『バイオロジカル・イノベーション・フォー・オープン・ソサエティー』(BIOS)が定めるある柔軟なライセンス条件に合意すれば、これを自由に使用できる。この取り組みを率いるのは、BIOSの設立者で責任者を務めるリチャード・ジェファーソン氏。同氏は、農業分野における生命科学に取り組む『カンビア』(本部オーストラリア、キャンベラ)の設立者でもある。
 「私が望むのは、権利を剥奪、あるいはないがしろにされていると感じている非常に不利な状況にある人々が、われわれの取り組みによって勇気づけられ、最終的には貧困や絶望から抜け出す方法を見つけられることだ」とジェファーソン氏は語る。「創造力はあるが、快適な暮らしや生活の質の向上のために自分たちの取り組みを生かす方法がわからずに、打ちひしがれている人が大勢いるはずだ」

 こうして世界が少しづつでも均質化*1していくことは良いことだと思うが、やはり下記のような意見ももっともだと感じるし、

 弁護士であり、カリフォルニア大学バークレー校ゴールドマン公共政策大学院の講師を務めるスティーブン・マーラー氏は、企業が投資に踏み切るには、はっきりとした相乗効果が確認できる必要があるだろうと述べる。マーラー氏は、パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンス(PLoS)が発行している無料の機関紙『PLoSメディシン』の12月号に掲載された論文で、オープンソースの手法を用いた熱帯病の治療薬の開発を提唱している。
 「IBM社はオープンソース・ソフトウェアに資金を出している」とマーラー氏は言う。「なぜならIBM社はハードウェアを売っているからだ。バイオ業界の企業がこのカーネルの開発研究に投資する理由についても、同じ筋書きを考えなければならない」

 更にこの仕組みが動き始めれば遺伝子組換え作物が制御の効かない状態で流通する可能性も高くなるんだろうか?  

*1:富の分配という点で