カウンセリング1−8

その日、最後にカウンセラー氏に尋ねられた内容は、
「死にたいと思うことはありますか」
だった。
それは鬱的な傾向にある患者にはテンプレート的に尋ねられる内容かもしれないし、或は本当に自死する可能性の高い人には向けられない言葉かも知れなかったが、僕が自分が追い詰められており、全てをリセットしたいほど困窮していることを目の前の相手が了解したサインだと捉え、またそのことに満足感を覚えた。
或はそれは患者への共感を示すサインとして発っせられる技巧的な一言なのかも知れないが、であるとすれば目の前のカウンセラー氏はその言葉によって期待通りの効果を得ることが出来たわけだ。
結局次の週のセッションを約して最初のカウンセリングは話し切れていないという少々の不満と、それでもある程度のこちらの困窮については理解を得ることが出来たという安堵感を持って終了した。