〜前略
 常識的には「自宅に引きこもってマンガなどを読みふけって社交性のない人間」という種類の意味でとらえられがちだが,世間で「オタクキング」と言われている評論家の岡田斗司夫氏の『オタク学入門』によると、日本のポップカルチャーを真に支えている、いわば「真性のオタク」とも言うべき人々の実像は、前述の意味のオタクとは全く異なる。
 岡田氏のいう「進化したオタク」とは、ごく要約すると「粋の眼」「匠(たくみ)の眼」「通の眼」を兼ね備えた人々のことである。
 こういう意味でのオタク族が、日本のポップカルチャーの中核に存在していることは確かなのだ。つまり、匠の眼の才能が作品をつくり、粋と通の眼を持つ人々がそれを評価し,作品の愛好者達に媒介しているのである。
〜中略〜
 これらの人々が、異なる分野の橋渡しをしたり、細部の解釈をする媒介者となって、普及・伝播のカーブを上昇させているわけである。
 英語では、これらの人々を「コネクター」と呼ぶようだが、彼らはたんに「つなぐ」だけではなく、もっと本質的な役割を果たす。つまり、普及・伝播の先導役となる人びとは、たんに作品の質的評価をするだけでなく、口コミやイベント、あるいは雑誌での記事などを通じて、この作品、このゲームはこういう層に向いており、キャラクター商品はこういうものが伸びるだろうというような結合・媒介機能を果たすのである。
 こうなると彼らはたんなる媒介者ではなく、社会の連結の中に新しい文脈(状況)をつくる人間であり、小さな新規市場を大きく立ち上げうる人々となる。
後略〜
(参照元:日本経済新聞 05/1/28 29面 『ゼミナール 産業文化力が拓く 18 普及・浸透 高い「オタク」の結合・媒介機能』スタンフォード日本センター)