〜前略
 所得格差を示す指標がジニ係数。係数ゼロは完全な平等で、一が全くの不平等。日本の係数は上昇傾向にあり、海外と比較可能な数値でみると0.322とドイツ(0.252)やフランス(0.288)をすでに抜き、米国(0.368)や英国(0.345)に近い。
〜中略〜
 エコノミスト増田悦佐氏が「社会主義革命家」と呼ぶ田中角栄元首相が登場してからは「均衡ある国土の発展」の名の下に財政資金が全国津々浦々に行き渡るようになり、世界に冠たる平等国家を築いた。それが今崩れていく。当然、社会の秩序にも影響が及ぶだろう。最近の凶悪犯罪や自殺の増加とも全く無縁ではあるまい。
〜中略〜
 もう一つはどうしても残るだろう所得格差の中で人生に意味を見出せるような「生き方」の教育だ。個人主義の英国や米国には、億万長者になれる能力がありながら環境保護死刑廃止などに一生をささげる人も多い。カネより何をするかに重きを置く。いわばジェラシーからの卒業である。皆が一応食べていけるという前提なら、これが最も大切と筆者には思える。
(参照元:日本経済新聞 2005年3月20日 p.28 『中外時評 不平等社会に耐えられるか』平田育夫 日本経済新聞論説福主幹)