お見合いその3

 昨日の続き。
 で、その後は爺さんが2階のスタジオを準備するのを待ちつつ派遣社員らしきおじさんと雑談。良い機会なので以前から疑問に思っていた点を確かめる。
 職場のある町は在住ブラジル人の多い町で、日常そのことを意識するのは駅前通にあるブラジル雑貨店と写真屋ポルトガル語看板なのだ。ショーウィンドウにはブラジル人家族の写真もよく飾られている。一般的にそう祐福でもないと思われるブラジルの方々はどうして写真屋の上得意なのか。仮説としてアメリカ人のように家族の写真を暖炉の上に飾ったりする習慣があるに違いないと勝手に思っていたのを確かめたのだ。
 おじさん曰く、在留資格の延長申請等に必要な写真の規定が無茶苦茶厳しいらしい。写真のサイズは元より写真の中の顔の長さがミリ単位で指定されていて場合によっては顎の影を顔に含めるかどうかで認められない場合もあるとか。写真のために入管のある名古屋まで余計に往復することは負担なので少しずつサイズの違う写真を2、3枚用意していくとのこと。そのあたりのノウハウも含めて写真屋を利用すると言うことのようだ。ちなみに予想していた家族写真云々についてはほとんど無いとのこと。何でも聞いてみないと判らないものだ。
話を戻そう。10分ほども待って、ようやく爺さんの準備が整いスタジオに通される。
 実はこのとき一つ問題があって減量の成果でスーツが体に合わなくなっていたのだ。まあ、ワイシャツ姿で撮ればいいやぐらいのつもりで軽く来てしまったのだが、やはりそれは失礼に当たるとのことでジャケットを貸してもらう。
 さすがに老いていてもこの道何十年のベテラン(想像)スタジオに入るとなんと無くそれらしい雰囲気が漂ってくる。ただ、いろいろとポージングやら服装についての指導が入るのだが、爺さんの社会の窓(古っ!)が空いているのが気になる。本当にこの人に任せてしまって良いのだろうか。
 減量の件を説明した際に「今ではすっかり普通の体型ですね」と言われ、愚かにも写真屋さんが言うなら本当にそうかな、と思いかけたが実際に写真を撮り始めると最初の一枚を除いてほとんどのポーズが半身の体勢。まあ、爺さんが本気でそう思っていたのなら爺さんの目を疑わなくてはならないところなんだが、世間はデブには厳しいのだなと再認識。
 正味1時間近くもかかり、なんだかんだで10枚近く撮って中から良い物を選んで現像してもらえるらしい。これなら納得のお値段だ。顔の表情も含めて普段使わない筋肉を使うせいかやたらと疲れたが、最後の方は結構その気になってしまうのだから我ながら可笑しかった。まあ良い経験になったと思う。
 ただ、最後まで社会の窓を開けたままの爺さんの作品が果たしてどんなものか。ちょっと怖いような気もするのだ。