人間回帰がトレンドに?

 巣鴨信用金庫(東京・豊島)は盗難や偽造された通帳やキャッシュカードによる被害を防ぐため、運転免許証などの顔写真のほか合言葉で本人確認する新型口座を16日導入する。キャッシュカードは発行せず、口座のある支店の窓口でしか預金を引き出せない。情報技術(IT)を活用したICカードの採用に動く大手銀行とは対照的な"ローテク回帰"。高齢者の顧客にも違和感なく受け入れられ、導入コストも抑える一石二鳥を狙う。
 取り扱うのは「がんじがらめの安心口座、盗人御用」。
〜中略〜
 配偶者や家族でも引き出しを認めない。本人確認は免許証やパスポート、それもない場合は顔写真を顧客に提示してもらう。そのうえ「好きな歌手と曲」「両親の名前」など複数の符丁を顧客ごとに決めておき、本人確認に使う。
後略〜
(参照元:日本経済新聞 2005年2月9日 p.7 「盗難・偽造にローテクで対抗 本人確認は合言葉 カード発行せず/引き出しは窓口だけ」)

 信金に限らず中小金融の生き残り策としては一つの方向性を示しているのでは。IT化の進展でこういった人間が直接対応するサービスは徐々に限られた「特別なお客様」への「特別なサービス」になっているが、シルバー層自体が潜在的な「特別なお客様」になっている昨今、狙い撃ちのサービスとしては面白い。
 セキュリティを強調しているが、穿った見方をすれば、支店を限定して、しかもどの道ATMの使い方が分からず職員が横につく必要のある層を窓口に誘導することが出来れば全体的にコストダウンを計ることが出来るし、金融機関のリスクでもある本人確認の手間を相手にとらせることを特別なサービスと言い切り、口座手数料までせしめることができるという。まさに一石二鳥どころか四鳥ぐらいの効果が見込める。
 ただ結局は個々の職員がバチェラー的な対応が出来るか、といった現場の対応が実際に売れるかどうかの決め手になるのでは?新しいものを受け入れるのに時間がかかりそうだし、下手な対応は口コミであっという間に広まりそうだし。
 例えば利用者が合言葉を忘れるなんて言うことは充分にありそうだが、利用者が悪くてもそこで下手を打てば「わしの金なのに、イチャモン付けてセシメルつもりぢゃ」と言った態度に出られかねない。
 いずれにせよ金融業に限らずサービス業全般で「人間が対応することへのプレミア」は大事になってくるはず。特に今後10年ぐらいは引退した団塊世代がもっとも優良な消費者として君臨することになるだろうし、潜在市場は大きい。日本にはサービスにチップを払う文化がなかったので如何に金を払うだけの価値があると思わせるかだろうけど、、、