カウンセリング1−7

 その場で語った内容については実は結構朧げだ。
 ただ、できるだけ焦点となる職場での状況から話しが大きく逸れないように生い立ちの話しや異性関係の話しなど自分を知ってもらう上では重要と思われるような話しも意図的に自分からはしなかったように思う。少なくとも自分からは。
 恐らくは自分の職場について、以下のようなことを話したに違いない。
 役所的な職場であり、就職して以来そのような組織全般において権威をおとしめるような事件が続いたことから職員にふりかかるストレスは増えていること。
 自分は年齢的には中堅と言われてもおかしくなくなっているが、後輩と仕事をする機会に恵まれずに下っ端としての役周りが多かったのが、いきなり新人を下に配置され、変な張り切り方をしてしまったこと。
 配置転換が頻繁で、今は経理的な仕事をしているが、実のところ数字、中でも金銭を直接取り扱うことには強烈なアレルギーを持っていて今の役処は好きになれないでいること。
 春先の忙しい時期、新人の後輩とほぼ放置されるような形で仕事を押し付けられ夏頃には一度かなり鬱的な状況におちいりその状況を見て見ぬ振りをしていた係長とともに叱責を受けたが、未だにその時の負債を返済仕切れずにいるのに係長は僕が深刻になって相談するまで状況を理解しようとしないこと。

 こう羅列すると、単に僕は今の仕事をこなすだけの能力を持っていないだけである、特にコミュニケーション能力が不足していますね。と取られてもおかしくない内容だが、その時は自分を取り繕うことよりも、むしろ多少自分の苦難について誇張してでも、今僕がどうにも抜け出せない蟻地獄にはまっていることをできるだけ深刻に伝えられれば良いと思っていた。

 そしてどうやらその点については成功したようだった。