またいつもの結果なのだろうか。

 そして終わりがやってきた、というところか。まだ判らないけど、今度の場合、査察官は彼女に投影されていた。
 忙しい仕事、自分の時間を大切にしたい。相手は自分の個人的領域を察知し、いて欲しくないときは身を引いてくれる人、もしくはそういうときに居てくれても負担にならない人。
 その場その場の行動と言うより、僕そのものに対する否定の表現なのか、そういう要求なのか、単なる一般論なのか。
 こんなに難しい謎かけをくれた人は初めてだ。
 彼女は今まであった女の中で最も僕に似ていると思う。パーソナルスペースを大事にし踏み込まれることを嫌い、自分に対する不安から相手の心を読むこと日常としている。他人に気遣いできるだけ傷つけないよう気を配ること。そして大事なことを話すとき言葉をこねくり回すところ。ま、僕よりはずっと頭がよいらしくすっきりした表現にはなっているが。
 似ていないところは彼女が時間厳守をモットーとして、恐らくその点については他人にもシビアなこと。
別れた後に当たり障りのないメールは貰った。これは彼女的には儀礼上欠かせない物で会話の上で伝えたいことは伝えてしまっているという思いからなのか。
 彼女が自分に似ているとすれば追いかければ逃げたくなると思う。相手にたいして惹かれているわけではない段階であまり迫られると自分のパーソナルスペースを浸食されているような気になる。
 だからといってこれからの時期、こちらとしては時間が掴めない相手とアポを取るためには多少強引に話を進める必要がある。引き延ばすための理由には事欠かない。
 ただ、今回はあきらめがつかない。つけるとしてももう少し先が見てみたい。彼女の被っているおそらくは僕並に分厚いペルソナの奥にどんな素顔があるのか見てみたい。少しはヒントも貰えているはずだ。ただ、今のところ底までのシナリオは見えず、彼女の中では既に決着はついているのかもしれない。