意外性のある結末

胃カメラの結果、月曜日の胃痛の原因はアニサキスであることが判明した。いつもと違うという僕の感想は結果的に当たっていたようだ。
酢鯖作りが母親のマイブームとなってから半年以上が経過しており、金曜日の歓迎会には鮭やらイカやらの刺身も出ている。
心当たりに関しては多すぎてどれか特定できないというのが正直なところ。でも実際にカメラに写るまで可能性としてすら考えてもいなかった結末だった。
人間誰しも可能性の低い事故については事例としてあることは認識していても自分の身の上に起こるということは考慮すらしないという典型例だろう。
僕はかつて鯖を捌いていて皮をめくった拍子にヒョコヒョコ踊る活きの良いアニサキスに遭遇したことすらあったのに。

もう一つ意外だったのはアニサキスという日本人にとって馴染みの寄生虫について今日話をした20人ばかりの人の内、名前を知っていたのはわずか2名だったこと。
まあ、僕を含めたアニサキスを知っていた3名の内2名は酢で締めても死なない可能性が高いと言うことは知らなかったので、この隣人については遭遇確率の高さの割りに知られていないということなんだろう。ちなみに僕は知らなかった方。人のことは言えない。それにしてもだったら何故鯖を酢で締めるんだろうか。てっきりアレはアニサキス対策でしているのだと思っていたのに。

僕によってもたらされたこの新情報によって我が家における酢鯖の出現率は激減するであろう事が予測されるけど、たぶん僕は出されれば酢鯖だろうがイカの刺身だろうが構わず食べるような気がする。なにせこの半年間3日と明けずに酢鯖が出る状況が続いており、確率的にいえばそろそろ当たってもおかしくない異常な分母分を食してようやく同じ食生活を送っている三人の内たった一人が当たったのだ。運が悪かったとしかいいようがない。それに結局一時的に激痛をもたらしたりするかもしれないけど長引くことは可能性としてほとんど無いらしいし。ただ、痛みが酷いと原因が特定しづらいので開腹手術をする例もあるらしい。僕の場合それほど痛みがなかったのは運が良かったのか、鈍感なのか。流石にアニサキスのために開腹手術をするのは嫌だな。


胃カメラはかつて呑んでから暫くの間、体調を悪くした苦い思い出があったので、今回は負担が軽いという噂の鼻から入れるものをわざわざこちらから指名して使ってもらった。前回胃カメラを呑んだのはたぶん5年ほど前で、当時も鼻から入れるタイプはあったけど組織の採取が出来なかったので断念した記憶がある。今は出来るらしいということで新しもの好き+口から入れるタイプへのトラウマもあって鼻からにしてみたのだが、結局線が細い分操作性が悪かったり出来ることが限られていたりして当初想定の30分を大幅にオーバーして1時間弱もかかってしまった。

まあ、新しい技術は枯れていない分何かと穴があるということは想像できることだけど、操作していた医師がやたらとこの最新式のカメラについて悪態を付きながら操作するので尚のこと恐怖感から嚥下反応が強くなったような気もする。というより、普段使い慣れていない機器をわざわざ使うハメになった事への腹いせだったんだろうか。僕もペン一本とっても道具にこだわる質なので気持ちは分からなく無いが、俎の上の鯉状態の患者に向かって現在使用している道具の信頼性のなさについてトクトクと語れば患者がどう思うかという想像力は働かせて欲しかった。まあ、判っていてこの新技術についての悪評を立てることが目的だとしたら相当質の悪い知能犯だな。

いずれにせよ、僕が胃カメラという文明の利器を喜んで受け入れるにはまだまだ技術の進歩が必要なようだ。


そう言えば、結局例の腹痛の原因はつかめずじまい。担当の医者はアニサキスが見付かって一件落着という顔をしていたが、診断の段階で圧迫痛のあった胆嚢近辺との関連を質問すると途端にしどろもどろになってあげくに毎回アニサキスだったんじゃないかと言い出す始末。いくら何でもその可能性については検討することすら馬鹿馬鹿しいとは思うけど。部位が違う事への説明が付いてないし。

結局次回痛みが出たときにすぐに来院するようにと言うことで落ち着いた。夜中に病院に来たところでロクな検査もできないだろうから今回も何の手がかりも無しということだ。