カウンセラー氏の行方。

なんとなくカウンセラー氏の所属する事務所のサイトを見ていたら、カウンセラー氏の名前が消えていた。それどころか、所属する他のカウンセラーの予約も主催者以外は入れられないようになっていた。
いくつかのシナリオが考えられるのだけど、サイトが改竄されることは事務所の規模等から考えるとあまり可能性は高くない。意図せずサイトの管理状況が悪くてたまたまそう言う状況になっていると言うことでなければ、事務所の方針が変わって主催者の個人事務所になったと言うことなのだろう。

元々カウンセリングについては紙と筆記用具以外はクライアントがリラックスできる道具立て、普通の客間程度の家具やお茶ぐらい、があれば良いのでそれほど維持経費がかかるとも思えないが、さすがに丸の内*1に小さいながらもオフィスを構えていれば賃料も馬鹿にはならないだろう。僕のかかりつけも含めて9人のカウンセラーがいてその一つの場所を共有していたのだが、それぞれ活動の場を掛け持ちするとしても一時間一万円で主催者が経費等を中抜きする、という形で考えると結局誰も儲からない状態なのではないだろうか。少なくともそのオフィスから出る揚がりだけでは主催者を含めて士業一般どころかサラリーマン並の年収も難しいような気がする。

という疑問は以前からあったのだが、カウンセラー氏自体は大学で教鞭を執っているようなのであのオフィスに関しては生活費の足しになっておまけに研究材料としての臨床経験まで積める一挙両得の場所ぐらいであまり気にしなくても良い立場なんだろうぐらいにしか思っていなかった。逆に言えばああいう形態がそれなりに成り立ってしまうということは大多数のカウンセラーという職業はニーズの顕在化には成功していないということだろう。

精神科医については近年のうつ病急増を受けて専門外の医師が鞍替えするケースがあるぐらい需要には恵まれているらしいが、カウンセリングに関しては日本では未だカウンセラーと言う名称と対になる国家資格が存在せず、事実上カウンセラーを名乗ることへの規制が存在していないこともあってどことなく胡散臭いイメージが付き纏っていることが原因の一つとして考えられる。

実際のところ自分の経験からいっても普通にうつ病患者をやっていればカウンセラーとかかわり合いになる機会はまず訪れない。普通うつの自覚があれば精神科医に行くし、保険医療のカウンセリング、医師の診断と指示が必要、については実際のところ薬物治療と比べて儲からないし、効率も悪いので余程の「名医」以外は採用していないと思う。となればいわゆる「はしご」中の患者がたまたま評判を聞きつけてやってくる以外のシナリオが考えづらい。まあ、そう考えるとあの事務所のような形態は2人ぐらいの独り立ちしたカウンセラーが駆け出しの人たちに仕事を回していくことで成り立っているんだろう。なんせ駆け出しでは良いも悪いも評判すら立たないということになる。

閑話休題。まあ「はしご」をしている患者としても、精神科医という存在自体に疑問を持たなければわざわざより胡散臭いカウンセラーに流れる可能性は低いだろうし、そもそも薬目当てで「はしご」している患者にとっては最初から対象外だろうし。

とまあ、いろいろ書いてみたけど、カウンセラーも精神科医も明らかに薬出し過ぎとか能力なさ過ぎといったケースでなくても人間対人間の話なのであわないの一言出来られることもあれば、明らかに薬出し過ぎ、治療方針メチャクチャでも最初に当たった医師と言うことで精神的に依存されるというケースもあるだろうということを考えると、明確な窓口が存在していないカウンセラーという職業はやっぱりきついなあと思う。現状ではどこかの企業のお抱えになるか、一般向けの本を書くか、ネットで露出を増やして自分でプレゼンスを高めるか、研究者との二足のわらじを履くかぐらいしないと厳しそうだ。本当は無理に保険医療にしなくても良いので早目に国家資格を制定して信頼性を担保してやれば現状なら自然にクライアントは増えると思うし、精神科医がやたらと薬を出すことがまかり通る世の中より、カウンセリングが一般的になった方が健全だと思うのだけどね。

そう言えばいろいろ書いたけど、結局カウンセラー氏がどうなったのかについては現状憶測のままだ。やれやれ、どうなるんだろう。

*1:名古屋の