人口の減少・高齢化に関しては、現在も人口流出と高齢化に悩む地方地域で問題意識が高い。しかし、経済の視点からは影響が大きいのはむしろ大都市圏だ。人口の減少率は地方の方が大きいが、高齢化の進展は大都市圏の方が大幅なためである。
〜中略〜
 労働力の年齢構造と産業構造には密接な関係がある。大規模製造業に代表される生産性の高い産業では、機械を効率よく稼動させるために、比較的若い労働者を必要とする。
〜中略〜
 今後労働力の高齢化が急速に進む大都市圏では、現在の大規模製造業を主体とした産業構造は大きく変化せざるを得ない。労働力における地方の比較優位によって、大年からそうした産業が流出する可能性がある。さらに、大都市には投資財産業が集中しており、それゆえ生産性も高かったが、投資財産業は今後落ち込む。逆に、伸びると考えられる消費財産業は、はるかに各地に分散的である。
〜中略〜
 以上の点から、今後地域間格差は縮小に向かうと考えられる。
〜中略〜
 ただ、このように大都市圏経済がマイナス面を抱えるといっても、それは地方が伸びることを保証しない。また、現在の地方は、1.大都市の生産工程の一部として組み込まれている、2.交付金補助金など財政資金の地域間移転で支えられているーなどの点で、大都市に依存しており、大都市の経済力が低下すれば悪影響が及ぶのは必至だ。
〜中略〜
 つまり、地方経済は自立の道を模索しなければならない。具体的には、広域経済圏としてまとまり、地域内で明確な水平分業を構築することがカギとなろう。
〜中略〜
 労働力の相対的な優位性により、自立の可能性は高まると考えられる。*1 

*1:週刊エコノミスト 2005.1.4 p29 『沈む大都市、浮かぶ地方 地域格差は解消に向かう 松谷明彦(政策大学院大学教授)』